『鳥は理由がないと飛ばない』の落とし穴!

鳥の習性

近頃よく言われている、『鳥は理由がないと飛ばない』という習性の話。
その言葉をそのまま鵜呑みにするのは危険です。
どういった背景からそう言われているのかを知って正しく理解しましょう!

 

『鳥は理由がないと飛ばない』とは?

ある鳥の飼育本に書かれていた一文です。

 

鳥は、通常理由がないと飛ばないため、
あなたの鳥が飛ばなくても心配する必要はありませんよ

 

と、そのようなニュアンスで書かれていました。

しかしこの事実には落とし穴があります!
そのままその本に書かれていることを鵜呑みにして
『そうか、ではうちの鳥が飛ばなくても心配はいらないんだ』
と安心してしまうのは早計です。

 

ハチくん
ハチくん
うちの鳥もあんまり飛ばないよ

 

私も飼育書にそう書かれているのを見たことがあるわ
ミヨちゃん
ミヨちゃん

 

ピーちゃん
ピーちゃん
ちょっと待って!

その言葉をそのまま素直に受け取らないでほしいわ!

 

 

野鳥には飛ぶ理由が山ほどある

確かに、鳥はこれといった理由がなければ飛ばないかもしれません。
『散歩がてらに空でも飛ぶか』などということは一切なくて、彼らが飛ぶとしたらいつも何かしらの理由があるのでしょう。

問題なのは、それが人間の都合の良いように解釈されているということです。
『鳥類学者が言っていた』などと、さも信憑性を持たせて声高々に掲げていますが、ちょっと考えてみてください。
野生の鳥というのは飛ばなくてはならない理由が山ほど起こるのです。

 


※何をするにも飛んで行動する鳥たち※

 

食べ物は自分で探さなければならないし、風で枝が飛んでくれば避けなければなりません。
人間の子供がうわ〜っとはしゃぎながら走ってくれば、踏み潰されないように急いで飛び立つ必要があります。
野鳥たちは『もう寝よう』と思ったとき、ねぐらまで自力で戻る必要があります。
(人間タクシーなどありません。)

朝から晩まで、しょっちゅう何かしらの理由で飛んでいる。
それが野鳥の生活です。

 

そうよ、私たちは飛ばなくても大丈夫な日なんて一日もないわ
ピーちゃん
ピーちゃん

 

 

放っておけば、1日に1メートルも飛ばない飼い鳥

一方、飼い鳥はどうでしょうか。
おっしゃる通り、鳥たちは理由がないと飛びません。
そして飼い鳥には飛ぶ理由が全くと言っていいほどありません

食べ物は何もせずとも手に入るし、危険はカゴの中にいることで防がれています。
遊んだあとカゴに戻るときもママやパパのタクシーで戻ります。
下手したら1日に1メートルも飛ばないのではないでしょうか。

彼らには飛ぶという身体の機能が備わっているのに、それを全く使わない状態なのです。
本当にそれが問題ないことなのでしょうか?

 

ハチくん
ハチくん
確かにいつも僕の手に乗って移動してばかりだなぁ…

 

『飼い鳥は野鳥とは違うのよ!』と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかしそれは矛盾しています。
もし飼い鳥と野鳥が違う生き物だというのならば、飼い鳥は理由がなくても飛ぶというケースがあってもいいはずです。
『散歩がてらに空でも飛ぶか』ということが起こってもおかしくありません。
理由がないと飛ばないという習性は野鳥と同じままなのに、身体だけが野鳥と飼い鳥とで違うなんてことはありません。

 

鳥のためではない、人のための飼育本

『鳥は理由がなければ飛ばないんだ!』という事実を知って、一番嬉しいのは誰でしょうか?

それは紛れもなく人間です。
鳥を運動させるには飛ばすことが欠かせませんが、実は飼い鳥を飛ばせるのってけっこう苦労します。
なぜなら、鳥は理由がないと飛ばないからです…笑

飛ぶ理由のない鳥に飛んでもらうには、人間がキッカケを作ってやらなければなりません。
正直言ってそれがけっこう面倒だったりします。

 

そこでこの都合の良い解釈が生まれたのです。
“鳥は理由がないと飛ばない”、“鳥類学者もそう言ってます”
という聞き心地の良いセリフを飼い主さんに聞かせて、
『あー、良かった!じゃあ飛ばなくても心配ないわね』と、飛ばすことへの怠りを正当な理由にさせてしまっているのです。
そうでないと『鳥に運動をさせて、健康的な生活を送らせるのはけっこうしんどいですよ』という切り口で飼育本を作らなければなりません。

それは飼い鳥業界の望むところではありません。
できるだけ多くの人に鳥を飼ってもらって、本やペット関連のグッズを売りたいのが業界の真意なのです。
そのため、飼い鳥の飼育本は、そのほとんんどが人間を安心させるため・喜ばせるための本に仕上がっています。

本来は鳥を健康的に飼育するための本なのに、人間を安心させるための本に取って代わっている。
それが飼い鳥業界の現状です。
また、飼い主側もそういったものを求めているので、いつまでたっても正しい飼育の情報が伝わらないままとなってしまっています。

もし『鳥は理由がないと飛ばない』という事実を、人間のためではなく本当に鳥のことを考えて飼育書に書くのであれば、

鳥は理由がないと飛びません。
飼い鳥はふだんの生活で飛ぶ理由が全く起こらないため、
理由を作って飛ばせるようにしてあげましょう。

と、こういった書き方をしなければなりません。

 

飛ぶことは体力を消耗するという人間の言い分

確かに飛ぶという行動は、ものすごくエネルギーを消費します。
鳥は飛び立つ前にフンをすることが多いですが、それは飛ぶのにあたって少しでも身を軽くするため。

小鳥のフンなんてほんとに微々たる重さですが、それでも身軽にするために身体から排出するということは、飛ぶということがそれだけ繊細なことなのでしょう。
なので、飛ばす環境や飛ばせるタイミングには気を使う必要があります。

 

ほーんと、飛ぶのってエネルギーが必要なのよ
ピーちゃん
ピーちゃん

 

しかし、体力を消耗するからと言って飛ばさなくても良いということにはなりません。
鳥の様子見つつ、ちゃんと飛ばせてあげないといけないのです。
ちゃんと飛ばせたところで、飼い鳥の飛行距離などたかが知れています。
元気な鳥が、体力を消耗して死ぬレベルに達するまで飛ぶなんてことあり得ません。

 


※1日の大半をケージで過ごす飼い鳥。そのままでは運動不足になること必至です※

 

飛ぶと体力を消耗するからと言って、ますます弱い鳥にしているのは飼い主さん自身なのだと自覚することが大切です。

 

ハチくん
ハチくん
僕、今日からポンちゃんを飛ばすことにする!

 

ただし、それには色々と注意することも必要です!
下記の記事に注意事項を記載しておきますので、よく目を通して実践してください。

 

 

まとめ

・野鳥には飛ぶ理由が山ほどある
・飼い鳥には飛ぶ理由がほとんどない
・『理由がないと飛ばない』と広めているのは人間を安心させるため
・飼い鳥は理由を作って飛ばせてあげることが重要

この世に飛ばなくても良い鳥など、ただの1羽もいません。
(健康で、尚且飛ぶ機能を持っている鳥に限りますが)

もし飼い鳥に飛ぶ必要がないのであれば、生物は進化の過程で不要なものはどんどん失くしていきますから、飛行能力が廃れてきても良いはずです。

今でも飼い鳥に飛ぶ機能が備わっている以上、やはり彼らには飛ぶことが必要なのです。