賛否両論あると言われているクリッピング。
私はクリッピングには否定的であり、絶対にするべきではないと考えています。
クリッピングは、鳥が鳥であることを尊重していないばかりではなく、健康的な生活をするにも害を及ぼし兼ねません。
もしこの記事を読んだあなたが、今現在クリッピングをするかしないか迷われているのであれば、もう一度よく考えてやらないほうを選択していただくことを願っています。
今回の記事では、クリッピングすることによる鳥への影響を解説していきます。
クリッピングをしてはいけない理由その1:体重管理
ペットの鳥は、体重管理をするのに飛ばすことがとても重要となります。
なぜなら、鳥にとって食事制限のみのダイエットはかなり難易度が高いものとなるからです。
食事制限のみで実施したダイエットには必ずリバウンドが伴う。
そうなると、飛ばして運動させるということが決して欠かせません。
クリッピングしてしまうと当然飛べなくなりますので、体重を適切に管理するのが難しくなります。
詳細は以下の記事をご参考いただければと思います。
クリッピングをしてはいけない理由その2:ストレス
鳥は、危険だと感じたのものから距離を取ることで身を守ります。
距離はどうやって取るかというと、他ならぬ飛ぶという手段で取るのです。
それを、飛べなくすることで抑えつけられてしまったらどうなるかはおわかりでしょう?
自分の身に置き換えてみてください。
もし自分が『怖い!』と感じたときに、思うように逃げられなかったらどうですか?
しかもそれが毎日のように続いたら、それはもうストレスフル状態ですよね。
そもそも飼い鳥は、カゴで生活をしている時点で危険対象から距離を取るという手段を封じられている状態です。
つまり、元々とてもストレスのたまりやすい環境で過ごしているのだということ。
飛べなくするということは、そこに更に輪をかけて鳥にストレスを与えているということになるのです。
メンタルが原因で引き起こる毛引きは、こういったストレスが多大な影響を与えています。
そうは言っても、放し飼いは放し飼いで別の問題が起こりますので、やはりペットの鳥はカゴの中で生活させなければなりません。
その代わり、放鳥中にたくさん飛ばせてストレスを軽減させてあげないといけないのです。
放鳥中ぐらいは、鳥らしい行動をさせてやるということが飼い主の義務となります。
人間が飼い鳥にクリッピングをする理由
健康な鳥をクリッピングする理由のひとつに、『誤って鳥を外へ逃してしまわないように…』というものがあります。
飼い鳥として生まれた鳥は、野生下ではほとんど生きていけません。
自分では採食できないし、カラスや猫その他の外敵に襲われたらひとたまりもありません。
迷い鳥が無事に保護されるケースもあるにはありますが、見つからない場合のほうが圧倒的に多いでしょう。
そんな悲劇を生まないためにクリッピングをする。
理由はそんなところでしょうか。
しかし、人間の過ちを防ぐために鳥にクリッピングするなど、完全に人間の責任を放棄しているとしか思えません。
逃げられないように鳥の身体に施術するのではなく、人間が迷い鳥にさせないようにどこまでも努力しなければならないのです。
シンプルに考えて、鳥の羽を切り落とすのってどうですか?
人間の髪の毛をカットするのとはワケが違います。
私たちの指の先が切り落とされているのと同じぐらい悲痛なことだと捉えてください。
クリッピングを施して飛べないようにするなど、人間の身勝手以外何者でもないということを私たちは認識しなければなりません。
(ケガをしていたり病気で安静していなければならないなど理由があれば別です。)
あなたが飼っているのは『鳥』です。
なぜ、わざわざ飛べないようにするのでしょうか?
飛んでほしくないのであれば、他の動物を飼えば良いのです。
他の飛ばない動物を。
自分が飼っているのは鳥なのだということを、シッカリと意識していただきたいですね。
昔、美容院で髪のセットをしてもらっていたとき、担当の美容師さんが
『僕の知り合いも鳥を飼っているけど、羽を切って飛べないようにしていた。それってどうなの?鳥って飛ぶものだよね?』
と言っていました。
その美容師さんは鳥を飼っていませんが、このように鳥の飼い主ではない人のほうが、よほど冷静な目で見れているというケースもあると思います。
クリッピングが始まったきっかけ
もともと、クリッピングは海外でされ始めたのが最初のようです。
向こうでは、日本よりもシーリングファン(天井の扇風機)が設置されている家屋が多く、飼い鳥がファンにぶつかったり巻き込まれたりしないように配慮するためクリッピングされるようになったのだそう。
けれど、その理由も身勝手なものであることには違いありません。
ファンが危険なのであればファンのない部屋で放鳥すればいいし、どうしてもその部屋で放鳥させたいのならぶつかっても危なくないようにすればいいだけのこと。
特別な訓練などしなくても、鳥は飛ぶのに慣れてくれば自ら障害物を避けて飛ぶようになります。
上手に飛べるように鍛えてあげるのも飼い主の役目。
とは言え、万が一ぶつかって大事に至っては大変ですから、危なくないように障害物には布やタオルをかけ、安全な状態にしておくのは重要です!
野鳥の雛のことを考えてみてください。
雛は、巣立つまでの間に何度も何度も繰り返し飛ぶ練習をします。
それこそ地面にぶつかったり木にぶつかったり色々しているはずです。
つまり、人間が思うほど彼らはか弱い存在ではないということ。
人間的思考で鳥を育てることが、ますます鳥を弱くしていっているだけなのです。
もちろん粗暴に扱って良いという意味では決してありませんし、野鳥の通りにしていては命がいくつあっても足りません。
だから、『ぶつかっても危なくない状態』というのを完璧に用意することは必要不可欠となります。
(ここは重要なので何度でも繰り返します!)
そこまで配慮して鳥に飛ぶ練習させるというのは、確かに根気がいることです。
けれど、それが鳥をペットにしようと迎えた人間の責任であると私は考えます。
もしそれが面倒だというのであれば、その人は鳥を飼うのに向いていないということになるのではないでしょうか。
果たして自分は鳥を飼うのに向いているのか?
そこのところをよく考えていただきたいものです。
鳥専門の病院に対して思うこと
病院側も安易にクリッピングを受け付けるのはどうかと思います。
通常、ただの健康診断でレントゲンを撮ったりエコー検査はしませんよね。
なにか症状が出ていない限りは。
クリッピングもそれと同程度の扱いにしてほしいと個人的は感じています。
病気の鳥やケガをした鳥に、一時的に飛行させないためにクリッピングをする。
そのぐらいの世の中になることを願ってやみません。
まとめ
・飛べなくなることで体重管理が難しくなる
・飛べなくなることでストレスがたまりやすくなる
・健康な鳥をクリッピングする場合、理由は100%人間のエゴ
私がこれほどまでにクリッピング行為を非難するのは、『気持ちの問題』からだけではありません。
単純に、鳥にとって飛べなくなることの代償が大きいからです。
所詮はペットの話ですので、飼い主さんのやりたいように飼えばいいのかもしれません
それでペットの身体に何の支障もないのであれば…です。
しかし、飼い鳥(特にメス)につきまとう肥満や過発情の問題が後を経ちません。
もちろんそれはクリッピングだけが原因なわけではありませんが、鳥たちに『飛ぶ』という行動をさせないことがどれほど問題の原因になっているかを真剣に考えるべきだと思います。
鳥は何よりも飛ばすことが大事。
鳥の身体は『飛ぶ』ことを前提に細胞が構成されています。
その機能が全く使われなくなるということは、健康的な生活から遠ざかることになるのです。