ペットの鳥は、オス鳥よりもメス鳥のほうが圧倒的に飼いづらいと断言することができます。
メスの鳥には、どうしても過発情という問題がつきまとうため、健康的に飼育するのがとても難しいのです。
実は、あらゆるペットの中でもメス鳥はかなり飼育の難易度が高い生き物なんじゃないかと個人的には感じていますが、あまりそのことが深刻に取り扱われていません。
ここでは、鳥の習性を踏まえつつ何故メスの鳥に過発情の問題が起こりやすいのかを解説していきます!
発情する原因!『巣』があるから発情する
『メス鳥の発情を抑制したい』と思ったときに、知っておいたほうが良い重要な事実がひとつあります。
それは、巣があるから発情するのだということ。
近年、スズメの数が減少しているそうです。
理由は、巣を作れる場所が少なくなってきているから。
巣を作れる場所がないと、繁殖が不可能となり子孫を残すことができなくなって、結果的に個体数が減ります。
鳥は、繁殖不可能な環境では絶対に発情はしません。
つまり、ペットの鳥がなぜ発情するかと言えば『その場所を巣だと思っているから』という一言に尽きるのです。
鳥たちが『巣』と認める3つの条件
それでは、鳥たちはどのような条件が揃うとその場所を『巣』として認識するのかを解説していきます。
1:餌が豊富にあること
雛たちに与える分の餌が行動範囲内で採取できないと巣は作りません。
子供を立派に成長させるには、何よりも食べさせることが大事です。
親鳥は、子供の分と自分の分両方の餌を必要とするので、それだけ豊富に餌が採れる場所でなければ巣は作らないのです。
2:気候が子育てに適していること
子育てに適した気候でなければ、巣を作りません。
春と秋は子育てに適した気候となります。
繁殖期が春と秋なのはそのためです。
3:外敵に見つかりにくいかどうか
道路の目立つ位置や、人に踏み潰されそうな場所に巣は作りません。
最近では、スズメの例のように巣が作れる場所が昔よりも減ってきてしまったため、ひと目につくような場所に巣が作られていることもあるようですが、やはりそういったケースは稀です。
通常は、雛たちが丸見えになるような場所は巣として選びません。
以上、これらが巣を作る条件となります。
この3つが無事にクリアできないと巣は作りません。
3つすべて揃わないと巣は作りませんが、この中で一番優先度が高いのは3つ目の外敵に見つかりにくいかどうかです。
いくら食べ物が豊富にあり気候がちょうどよくても、せっかく生まれてきた雛たちが外敵にさらわれてしまったら全く意味がありません。
そのため、鳥たちが巣を作る場所を選ぶとき、まずは目立たない場所があるかどうかを優先して探し出すのです。
鳥たちにとっては、どこにでも巣になり得る
数が減少しているスズメたち。
だんだんと巣を作る場所がなくなってきてはいるものの、3条件に当てはまればどこにでも巣を作ります。
信号機の上で確認された例もあるそうです。
『巣』というと、一般的には木の枝で作ったカゴ状のものや巣箱なんかを思い浮かべると思いますが、発情対策においてはそれらのイメージを捨てる必要があります。
彼女たちは、条件さえ揃えば木の枝なぞなくともその場所を『巣』として認識します。
※いわゆる『巣』のイメージ。
このような場所でなくともそこを巣だと認識する可能性は十分にあります※
つまり、あなたの飼っている鳥が立っているその場所も、『巣』だと認識している可能性があるということです。
それが、例え冷たいガラスの上であろうとも、騒がしい音を出すテレビの上であろうとも、です。
飼い鳥は常に巣を作れる環境で生活をしている
飼い鳥の生活環境には、3条件がすべて揃っています。
この条件が揃ったとき、特に発情行動に繋がりやすいのがメスの鳥となります。
(オスが発情しないという意味ではありませんのであしからず)
メスの鳥の過発情を抑えるのがとても難しいのはそのためです。
彼女たちにとっては、人間の暮らしそのものが『巣ごもり態勢』であり、本来であれば子育ての期間しか取らない行動なのです。
それを日常的にしているのが、飼い鳥の現状です。
ここで、以前に投稿した2つの記事を元に解説をしていきます。
鳥類は危険から身を守るときに、危険対象から『距離を取る』という行動を選択するという話をしました。
哺乳類とは違い、身を守る手段として隠れることを選択するときは『これ以上距離を取れない』と判断をしたときか、もしくは『子育てをするとき』のみです。
家で暮らすということは、鳥にとっては巣の中にいるのと同じことであり、子育てモードにさせていると言っても過言ではありません。
私たちは、彼女たちを常に巣の中で生活させているのだという自覚を持たなければならないのです。
そう考えたとき、飼い鳥に発情期というものは存在しません。
24時間365日発情可能な状態なので『今はその時期』『その時期ではない』などの考えは当てはまらず、『常に発情状態』と考えたほうが良いのです。
そこから、いかにその状態を抑え込んでいくか…という考え方をしなければなりません。
巣だと思わせないために、外敵がいるということを認識させる
3条件が揃わないと鳥たちは発情しませんので、これらの条件がひとつでも完璧に欠落していれば発情は抑制できるということになります。
しかし、餌の調整や気温の調整で抑制をさせるのはほとんど不可能ではないかと、私は自分の体験から感じています。
まず、餌を減らして発情抑制をさせようと思うと、鳥は飢餓感を抱くようになります。
飢餓感は肥満を引き起こしかねないので、それはそれで過発情と肩を並べるぐらい危険です。
(ただし餌調整に関しては個体差があったり、飼い主さんの生活パターンによっては成功する可能性がありますので、色々と調べて実施できそうであればやってみても良いと思います。)
気温の調整もなかなかうまくいきません。
我が家の鳥は、真冬の室温10℃の状態でも完全に抑制はできていませんでした。
鳥は寒さに弱いと言われているけれど、人間が思っている以上に寒さへの耐性があるようです。
冷たい風などに晒されれば別でしょうが、そんなことをさせたら体調を崩しますので、気温で調整させるのもかなり厳しいということになります。
唯一、体調に問題を起こさずに発情抑制として実施することがでるのが『外敵の存在』ということになります。
鳥たちに『ここは外敵に狙われやすいから巣としてふさわしい場所ではないんだよ』と思わせることが、一番やりやすい方法なのです。
とにかく理由は巣があること!『巣を潰す』という視点で抑制する
本来、鳥の身体はマッタリと暮らすようにできていません。
常に緊張感を持った暮らしをするようにできているのが鳥という生き物なのです。
あなたの鳥には『お気に入りの場所』がありますか?
もしあれば、そこは確実に『巣』だと勘違いしています。
お気に入りの場所には何か見慣れないものなどを置いたりして、鳥たちが『巣』だと認めている場所をどんどん潰していきましょう。
そうすると鳥たちは、『あれ…侵入者がいるぞ。ここは巣に適していない!』と判断し、そこを巣だと思うのを止めます。
この『お気に入りの場所』は、1箇所だけではありません。
獣医から聞いた話によると、放鳥時の部屋の中にはだいたい20箇所はあるそうです。
その中で優先順位がつけられており、『ここにいられないなら、あそこへ』『あそこにいられないのであれば、次はここへ』といった感じで、常にお気に入りの場所へいこうとします。
それをことごとく阻止してください。
これはケージの中でも同じことです。
おやすみ用の板やテントなどを設置している飼い主さんもいらっしゃるかと思いますが、それらのものは『どうぞここで卵を生んでください』と先導しているようなものなので、一切やめましょう。
ここで、『お気に入りの場所をなくすなんて可哀想』と感じるのは人間的思考(もっと言うと哺乳類的思考)です。
巣引きを予定している鳥たち以外に『巣』は全く必要ありません。
どうか、鳥は本来マッタリする生き物ではないし、マッタリしてるのは異常なことなのだと考えてください。
人間の気持ちよりも、鳥の習性を考慮して生活させることが大切です。
発情過多というのは鳥にとっても身体に負担ですし、巣でもないのにそこを巣だと勘違いさせている…言わば錯覚を引き起こしている状態になっています。
なので、目を覚ましてあげることは決して悪いことではありません。
というよりも、私は目を覚ますように努力するのが飼い主の努めではないかと思っています。
何より大切なのは、哺乳類とは何もかも違うという考え方
人間は、家の中で生活し、その中でくつろぎリラックスし、安心することで心の健康を維持します。
そのため鳥に対しても同じことをしてやるのが良いことだと勘違いをしがちです。
しかし、鳥類にとってこれらのことは全く必要のないことです。
必要になるのは、唯一子育てをする時期のみ。
過発情というのは、それを人間が理解できないために起こる問題であると私は思っています。
こちらの記事では発情対策の実例を紹介してますので、よければご参考にしてみてください。